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文化的雪かきと技術的盆栽

村上春樹のダンス・ダンス・ダンスという小説に文化的雪かきというフレーズが出てくる。

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ダンス・ダンス・ダンス (講談社文庫) 🔗 www.amazon.co.jp

「穴を埋める為の文章を提供してるだけのことです。何でもいいんです。字が書いてあればいいんです。でも誰かが書かなくてはならない。で、僕が書いてるんです。雪かきと同じです。文化的雪かき」

フリーライターである主人公こと「僕」が牧村拓という小説家に自身の説明をするときの言葉だ。(ちなみに牧村拓 -MAKIMURA HIRAKU- は村上春樹のアナグラムだ(と、wikipedia で知った))

このフレーズは印象深く、作中でも牧村拓に面白いと評されている。

「その雪かきという表現は君が考えたのか?」 「俺がどこかで使っていいかな?その『雪かき』っていうやつ。面白い表現だ。文化的雪かき」

で、最近このブログを作っていたら技術的盆栽というフレーズが頭をよぎった。

「技術を使うための場を作ってるだけのことです。何でもいいんです。技術が使えればいいんです。でも業務でやるのは怖い。で、僕が書きたいだけなんです。盆栽と同じです。技術的盆栽」

web エンジニアは定期的にブログを作る習性がある生き物だと思うが、そのモチベーションの一つには最新技術を使って最適化した web をやりたいというのがあると思う。コンテンツ管理からコンポーネント設計、最適化ビルド、デプロイ戦略などなど…。時代によってトレンドは変わるが、そのへんを一通り実践するのに便利なのがブログだと思う。

そして盆栽というのは、ついついいじり続けてしまう趣味性にある。業務プロダクトであれば一通り仕様を満たせば OK だが、個人プロダクトにはそこには無い趣味的な熱量がある。ちょっとしたこだわりや調整にいくらでも情熱を注ぐことができる。誰の承認を得る必要もなく、好きに選び取った技術を使っていいし、ビルドがコケてもいいのだ。