シャニマスと幸福論
シャニマスのアルストロメリアというユニットの『アルストロメリア』という曲で「幸福論誕生」と歌われている。
正直シャニマスやアイドルというものに対して自分はまだ理解が足りていない。シャニマスはアイドルをプロデュースするという裏方の視点であり、特に表舞台としてのアイドル活動は間接的にしか描かれていない(前作は 3D のライブシーンがあるがシャニマスには無い)。
そのためシャニマス世界の世間ではどのような存在なのか、アイドルに対する知見が無いとぜんぜん想像できない感じがある。
しかし上記ファンメイドのツイートのように学生姉妹デュオで駅前弾き語りというのは、あーあるある、あるよねと存在感が高まって良かった。(ちなみに実際のアルストロメリアは 3 人ユニット)
そこで彼女らが歌うのがこんな歌詞である。
チュ チュチュ 幸福論 誕生
アイデンティティー見つけた
アルストロメリアの花
咲いた咲いた Silent Love
なにしろ幸福論誕生である。そしてアイデンティティーを見つけている。すごい。だが、なにがすごいのかよく分からない。wikipedia に挙げられているような三大幸福論も自分は読んでない。だが、聴くたびに「誕生しちゃったかー、幸福論」と思わず腕組みしてしまう。
人が生きる上で、幸福論とアイデンティティーを見つけているということはもはや人生をクリアしているのではないか。教祖的な立場である。それゆえにアイドルという仕事をしているように感じられる。
そういえば椎名林檎のデビュー曲も幸福論だ。
あたしは君のメロディーやその
哲学や言葉 全てを
守り通します君が其処に
生きてるという真実だけで
幸福なのです
雛菜はね、雛菜がしあわせ〜って思えることだけでいいの
一方でシャニマスのノクチルというユニットの市川雛菜 は能天気に振る舞い、「しあわせ」について語る。
「しあわせ」はどのアイドルでも仕事としてやっていく上で通底するテーマになっているため、自分がどういうアイドルになりたいか? アイドルは何を求められているか? という答え探しは各プロデュースシナリオで語られる。
しかし、ノクチルは後発で追加されたユニットであり、これまでの一般的なアイドルに対するカウンター的な異色さが多分にある。自分はシャニマスしかやってないが、おそらくはアイマスシリーズ 15 年という積み重ねもありそうに感じる。
各ユニットは、見知らぬ者同士が集められ、知り合い、目標や信条を理解し合って徐々にチームとしての結束を高めていくところがシナリオ的な妙味なのだが、ノクチルは幼馴染 4 人組であり、最初から完成されているゆえに外界や変化を受け入れづらい。
興味深いのはノクチルは作中世界において 2020 年末の時点でもまだ売れてないことが描かれているところだ(クリスマスに仕事が無くバイトをしている)。
それというのも半年前の「天塵」シナリオにおいて、アイドル仕事で求められた役割が意に沿わなかったために勝手をしてしまい、業界から干されている立場だからだ(かつてt.A.T.u.というユニットが日本の音楽番組出演をすっぽかして騒然としてたのを思い出す)。
シャニマス世界の人々は誕生日を迎えても歳を取らないが、シナリオは続いており展開が気になる。
正月に始まるノクチルイベントも相変わらずロックそうだ。
「……マンモクスン」「うん」 「氷河期氷河期~ ♪」 なやり取りもわけが分からなすぎる。
そんなノクチルの市川雛菜は他のメンバーが居残り練習していてもそれに付き合わず、そこに後ろめたさを感じることもない。プロデューサーから見て不安になるところだが、自身がしあわせであることが他者にとってもしあわせになるという確固たる信念を貫いている。
これはアルストロメリアの幸福論とは違った形ではあると思うが、アルストロメリアもノクチルもその他アイドルも、見せるのは信念でありその生き様、強度なんだろうなと感じている。