シャニマスをやり始めて150日経った
アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)をプレイし始めてからそれなりに月日が流れた。
アイマスシリーズは 15 年以上もの歴史があり、現在まで主に 5 シリーズあるのだが、自分がプレイしているのは最後発のシャニマスだけとなっている。
普段ソシャゲはやらないし、どうぶつの森も 1 週間くらいしか続かなかったし、ゲーム自体も最近やってないのだが、シャニマスは継続が容易で定期的にコンテンツが盛り上がるのでプレイできている。
地獄のミサワ
アイマスというコンテンツについてはこれまで未プレイながらもネットでなんとなく漏れ伝わってくるところがあり、近年特に意識させられたのは地獄のミサワ氏のコラム漫画だった。
ギャグ漫画家が真摯な姿勢で人生かけてコンテンツにハマっていくというギャップが大変素晴らしく、なんだかよく分からないなりに感動してしまった。
あんたはここでふゆと死ぬのよ
さらによく分からないものとして、「あんたはここでふゆと死ぬのよ」というセリフがネットで流行っていた。
このセリフは 7・7 という音数により 5・7・5 の下の句に合わせやすいということや、発言者(言ってない)である冬優子のキャラクター性、そして「ふゆ・ゆうこ」ではなく「ふゆこ」という名前であることを知ったりした。
言ってないセリフ
この「言ってないセリフ」というノリは「シャミ子が悪いんだよ」が先行して流行ったものであり、その折にはまちカドまぞくを楽しんだこともあったので、コミュニティによるネットミームの盛り上がり感としてはなんとなく理解できるところではあった。
もぎたて ♡ にーちゅ
しかし、まったくよく分からなかったのは「もぎたて ♡ にーちゅ」という言葉。シャニマスの作中コンテンツに登場するフレーズなのだが、熟練者でも意図を汲み取るのが難解なようで、当時のネットはなんだかざわざわしていた。
未プレイの自分にはもちろん理解できるわけもないのだが、漫画家の塀先生による二次創作によってひとつの解釈が提示されており、描かれているノクチルのユニットについても興味深く感じられた。
そうした分からないものであるがゆえに分かっていきたいというモチベーションが生まれたので、このあたりでようやくプレイするに至った感じだと思う。
ダ・ヴィンチ・恐山
恐山氏はオモコロなどで活躍するライターだが、シャニマスについての造詣が深いと知ってよく見るようになった。
好きなアイドルをグラレコで描いてもらう
オモコロでイラスト図解による議事録テクニック(グラレコ)を取り扱った回があり、そこで様々なテーマを語っては描いてもらうという企画をやっていた。
後半の「好きな人」というテーマにおいて、恐山氏がシャニマスのアイドル芹沢あさひさんについて語るところがこんな感じだった。
私からいいですか。2 年前から、『アイドルマスター』というゲームにハマっちゃって。率直に言うと、頭がおかしくなっちゃったんですよ。めちゃくちゃ良くて。
というのも…
この狂気じみた語りに対してみんな「めちゃくちゃ良い…。」と返すところも良かった。
ARuFa の洞察力
恐山と月ノ美兎が ARuFa に初見でシャニマスをやらせる企画なんかもあった。
キャラ紹介ページを見ながら ARuFa が感想を述べていったのだが、件の冬優子ちゃんについて立ち絵からの読解が鋭かった。
「この立ち絵でさ、おなかにチャックがあるファッションしてるってことはさ、腹黒みたいな胸の内を明かすみたいなそういうメッセージなんじゃないの?」
「ピンクに黒を合わせるっていう 2 つのさ、二面性みたいなとこもやってるってことなんじゃないですか」
談話リングドリームチェイサー 2020
恐山氏の個人チャンネルで 2020 年末にやっていた語り。
ただのシャニマス語りなのだが、非常に解像度が高いオタク語りという感じで、聴いていて心地よかった。
で、どんなゲームなのか?
というわけで経緯や周辺情報を述べてきたが、このゲームは結局なんなのかというと基本ノベルゲーだ。
アイマス=音ゲーというイメージがあったのだが、シャニマスは元祖アイマス(アケマス)に近い構成となっていて、一定期間内にレッスンでアイドルのパラメータを成長させてオーディションでの優勝を目指していく。
ゲームシステムはパワプロ的な育成モードとなっており、それはすなわちルーツを辿ればときメモと言える。
山「『サクセスモード』は、実は他のゲームを参考にして生まれたんです。弊社の一大コンテンツの『ときめきメモリアル』なんです。あれを好きな人がそういうシステムを導入したんです。物語性のあるもので、ですから彼女とかもいますし、3 年で成果を達成する形になっています」
ー『ときメモ』ですか!?
山「単純に開発担当の中に『ときめきメモリアル』が好きな方がいたっていう……」
森「開発中に隣でプレイしている人がいました。『それ、面白いの?』みたいな感じになり『これだ!これだ!』となりまして…」
この成長させる過程を通してイベントが発生し、キャラクターに応じたストーリーが語られる。それなりにボリュームのあるシナリオが用意されており、初プレイだと 1 プレイに 1 時間以上かかったので驚いた。ソシャゲらしくスタミナ制となっているのだが、1 プレイが長いためスタミナを使い切ることは基本無いと思う。
パワプロ的な成長システムやオーディションの勝ち抜き方については初見ではやたら情報量が多くて複雑で、ゲーム中でのチュートリアルも全く説明しきれてない。それでも、いったいこのキャラクターはどういう話なのだろうかと気になって進めていった。
キャラクターたち
シャニマスの登場アイドルは現在のところ 6 ユニットで 23 人となっている。別シリーズのデレステでは 200 人近くも登場するので、人数を絞ったぶんキャラクターの掘り下げが深い。
そもそも固有ユニットが登場するのは近作のことのようで、元々はプロデュースするアイドルとプロデューサーとの 1 対 1 の関係性が強かったようだ。
シャニマスでもプロデューサーとアイドルのやり取りはメインではあるのだが、プロデュース時にサポート役に選ぶアイドルの話も展開され、そちらはほぼプロデューサーが絡まないユニットメンバー同士の日常が語られる。
また、月 1 程度で追加されるイベントでは各ユニットにフォーカスした長編シナリオが展開され、こちらもあまりプロデューサーが絡まない。
そこにプロデューサーはいなくてもいい
このへんはシャニマスのイラストカードを西洋美術史で考えるエントリにも繋がってくる。
構図・時間のずらし・鑑賞者の立ち位置の操作に注目してみて感じたのは、「シャニマスは、『ある出来事のピーク以外で起きたアイドルの感情の動き』がイベントやガシャの報酬に値すると考えていて、かつそこにプロデューサーがいない状況を肯定している」ということ。
言い換えれば、「アイドルがそこにいて青春してるなら、そこにプロデューサーはいなくてもいい」ということです。
これ、アイドルと二人三脚でトップアイドルを目指すゲームとしてスタートしたアイドルマスターというゲームにおいてかなりの異常事態ですよね。プロデューサーの職務放棄みたいなもんです。
アイマスというと P 字頭のプロデューサーが二次創作で描かれることが多いが、シャニマスの場合はアイドルたちを見守るイケメンキャラという存在として描かれやすい感じがしている。これはつまりプレイヤー自身ではなく、プロデューサーもアイドル同様に個性を持ったキャラクターという存在だ。
(23 人中プロデューサーにガチ恋勢は 7 人くらい存在するのだが、プロデューサーはそこに向き合わず社長しか目に入らないという解釈がある(両者とも公式に顔は出てない))
ストレイライト
シャニマスの 6 ユニットのうちストレイライトとノクチルはサービス開始時には存在せず、後から追加されたユニットになる。そのためか異色さが高く、シャニマスでも特に気になるユニットだった。
ストレイライトは 3 人組であることから、シャニマスの顔役である模範的なイルミネーションスターズと対比的な存在になっている感じがある。
先述の通りシャニマスに関心を持ったきっかけの一つには、ストレイライトの黛冬優子と芹沢あさひの存在が大きい。
冬優子は専門学校の 19 歳で、アイドルという人々から求められる役を演じることに長けており、そこに誰にも譲れないプライドもある。対してあさひは中 2 の 14 歳であり、天才肌ゆえに直感的で、好奇心駆動であり、役を演じるということを知らない。
正反対とも言える個性の二人ゆえに最初は全くすれ違い、そして根本的に相容れないのだが、それでもシナリオを通して関係が強まっていくところは少年マンガのような成長感がある。
この二人は特に分かりやすく好きなのだが、しかしシナリオを読んでいくと、ストレイライトのもう一人の存在、ギャルである愛依ちゃんの存在に妙に感動してしまう。もし愛依ちゃんが居なければこの二人はまとまることができず、ストレイライトは一瞬にして瓦解してしまうからだ。
各キャラが立っているシャニマスにおいて、愛依ちゃん単体ではあまりぱっとせず自分的には 23 人中 20 番目以降くらいなポジションに感じてしまうのだが、これがあさひと冬優子の間に入ると誰よりもかけがえのない存在となるのが面白く感じている。
そういうシナリオの機微がたいへん素晴らしい。
そんなわけでストレイライトはまるで HUNTER×HUNTER のような熱さがあるなあと思って描いたのだが、ここではビスケ役が愛依ちゃんになっている。しかし本当は対レイザー戦でゴンとキルアを受け止めるヒソカの存在こそが愛依ちゃんというイメージだった。
ノクチル
存在自体が青春邦画。アイドルって売れてるもんだと思ってたのに、ノクチルは今のところ売れてないアイドルをやっている。とはいえ地下アイドルのような悲壮感があるわけではなく、ただただマイペースな自然体だ。
世間に知られるアイドルよりも幼馴染である自分達らしさ、やがて来る将来よりもまだは今を選び取る。アイマスのアイドルって売れなくてもいいのか?と心配になるが、幸いにして誕生日を迎えても歳を取らないシステムなので、ずっと将来の変化の予感を前にしたままの状態を演じ続けることができる。
幼馴染であるがゆえに、仲間内で語られる会話はハイコンテクストで読者に説明的ではない。そうしたシナリオ語りの匙加減もなかなかすごい。
2020 年の夏のイベントでは海でのデビューライブ(誰も見てない)、2021 年正月のイベントでは正月番組出演(映らず)、という「らしさ」を見せてきたのだが、おそらく 2021 年夏のイベントでは台風クラブよろしく何かをもたらす予感を前にして台風の中で歌ってくれるんじゃないかと期待している。どこまでも青春していてほしい。